種なしフルーツについて
バナナを輪切りにすると、中心部に小さな黒点があります。
実は、黒い点が種子があった名残です。
元々、バナナは種がありました(野生のバナナです)。
小豆程度の硬い種がたくさん詰まっていました。
しかし、現在のバナナは種がないです。
つまり、突然変異によって種なしバナナが出現しました。
ちなみにバナナは、多年草です(1本の茎に10房程度〜15房程度の果実ができます)。
目次
種なしフルーツについて
突然変異は、生物やウイルスが持っている遺伝物質の質的や量的変化です。
植物は、雄の精核と雌の卵子から遺伝の性質を決める染色体を1組ずつ受け継いで行きます。
精核や卵子を形成する時は、2組の染色体を半分に分けます。
再び受精すると、再度2倍体になります。
●染色体は、遺伝情報の発現と伝達を担う生体物質です。
①野生のバナナ
元々、染色体が2本ずつの2倍体です。
②現在のバナナ
突然変異によって、染色体が3本ずつの3倍体になりました。
つまり、種なしバナナが誕生しました。
種なしバナナの仕組みについて
種なしバナナは、3倍体です。
奇数の場合は、染色体を上手く半分に分ける事ができないです。
つまり、種子が正常にできなくなってしまいます。
ちなみに種なしバナナは、仮茎の脇にできる新芽を使用して苗を育成できます。
畑に植える事でクローンとして生産できます。
●仮茎は、遺伝情報の発現と伝達を担う生体物質です。
●クローンは、分子・DNA・細胞・生体などのコピーです。
植物にとっては、種を残す事ができないので問題です。
しかし、人間にとっては好都合です。
つまり、様々な種なしフルーツが人為的に開発される事に繋がりました。
主な種なしバナナについて
①種なし葡萄
栽培時は、ジベレリンに房を浸す事によって、
種子の休眠を解除したり、受粉せずに果実を肥大化する事が可能です。
そしてジベレリン処理は、開花前と開花後の10日程度で2度渡って行います。
つまり、受粉せずに子房が成長して種なしブドウができます。
●ジベレリンは、植物ホルモンの総称です。
生長軸の方向への細胞伸長を促進させたり、種子の発芽促進や休眠打破の促進、
老化の抑制に関わっているホルモンです。
②種なし西瓜
染色体を倍にする作用があるコルヒチンを付与します。
4対の染色体がある4倍体の西瓜を生成します。
4倍体のスイカの種子を育成して、雄花に2倍体の雄花の花粉を付与すると、
3倍体の種ができます。
その後、種を蒔く事で種なしスイカが生産できます。
つまり、3倍体は正常に減数分裂ができないからです。
結果的に種がないので子孫は残せないです。
●コルヒチンは、イヌサフラン科イヌサフランの種子や球根に含まれている有機化合物です。
●減数分裂は、真核生物の細胞分裂の1種です。
種なしフルーツの仕組みについて
具体例は、スイカです。
①種子を用意します(2倍体です)。
野生の西瓜は、花粉(父親です)と雌蕊(母親です)の2組の染色体があります。
②コルヒチン処理をします。
芽が出た時期にコルヒチンを投与すると、4組の染色体を持つ4倍体になります。
③減数分裂をします。
4倍体に2倍体の西瓜の花粉を受粉させます。
④2代目の西瓜の完成です。
果実が実って、種子が3組の染色体を持っている3倍体になります(1代目の子どもです)。
⑤種なしスイカの完成です。
3倍体に2倍体の西瓜の花粉を受粉させます。
果実が実って、種なしスイカの完成です(2代目の子どもです)。
減数分裂が正常に行われないので、種が生成しないです。